戦争の季節

毎年この時期になると、太平洋戦争を特集した番組が多くなります。NHK特集で3日間にわたってやっていた「海軍400時間の証言」を見て、衝撃を受けました。番組では、海軍の中枢である「軍令部」のメンバーが中心となって、戦後35年が経ってから行われていた「海軍反省会」で語られた内容が明らかにされました。開戦の経緯から特攻作戦の計画、敗戦後の軍事裁判対策まで、海軍がどう戦争に関わってきたのか当事者の言葉の一言一言は信じがたいものばかり。正直なところ、私はこれまで陸軍にばかり悪い印象を持っていたのですが、3日間で海軍に抱いていたイメージがすっかり変わってしまいました。
2年程前、私は仕事で、海軍の機関兵として軍艦に乗組み、太平洋戦争を体験された方の自分史出版に関わりました。海軍の訓練や生活、戦闘、敵艦の攻撃を受けて負傷した時のこと、艦が沈没するまでの兵士たちの様子etc…、その時語られた生々しい話は今でも忘れることはありません。こうした多くの兵士の命が、実は一握りの軍令部幹部によるあまりにも無謀な計画によって失われたのだという事実に背筋が寒くなる思いです。
番組の中で語られた「やましき沈黙」という言葉は、特に私の心に突き刺さりました。あってはならないことだと感じながら、組織の中でそれを言い出せないまま空気に流され、間違った方向に進んでいく様は、現在の私たちの日常の世界にもそのまま当てはまることです。
戦後64年。戦争を体験した世代の人たちが少なり、記憶が遠くなりつつある今だからこそ、あらためて体験者の証言に耳を傾けなくてはならないのでは。
番組の中で紹介されたのは、400時間の証言のほんの一部。残されている証言テープをすべて聴きたいと思うのは私だけでしょうか。