気になる書評22

ドラマも好印象だった。比較するのも面白い。

■下町ボブスレー——世界へ、終わりなき挑戦 [著]伴田薫

氷のコースを時速120キロ以上で滑走するボブスレーは、氷上のF1と呼ばれる。摩擦抵抗と空気抵抗をできるだけ減らし、いかに減速させないかがかぎになる。不思議なことに物作りの国日本の選手は今まで外国製のそりに乗ってきた。高い技術力で知られる東京都大田区の町工場が中心となって、その国産化に挑んだ。ノンフィクションライターの著者は約80人の関係者に取材し、下町の人たちの挑戦を丹念に追う。
 下町ボブスレーは結局、ソチ五輪の日本チームに採用されなかった。しかし、その決定から1カ月後の全日本選手権大会で、優勝こそ逃したものの、滑走したそりのなかで最高速度を出した。このエピソードがすがすがしい。

NHK出版・1575円

2014.3.30 掲載 朝日新聞書評より