気になる書評6

電子書籍は手軽だけれど、やっぱり紙の本には魅力があるよね。外見はやっぱり大事、だと思う。

●本棚探偵の生還 [著]喜国雅彦
■収集欲をそそる美麗な造本

 1、古書店が夢に出て来る。2、本棚の配列には一家言ある。3、本は見て、触って楽しむ。4、とくにミステリーが好み。以上の条件を満たす方に強くお勧めするのが本書である。その理由は、実際に手にとってもらえばわかる。
 美麗函(はこ)入りの2冊組。著者が意匠を凝らした造本には、豆本に変身する月報まで付いている。2冊で異なる紙の質感を、指先でじっくり味わってほしい。電子書籍がコンビニならば、紙の本はアールデコ様式の老舗百貨店に匹敵することが実感できるだろう。
 かつて、本は人々の憧れだった。高くて手が届かない棚にすました顔で並ぶ函入り本を、首が痛くなるほど見上げていた記憶はないだろうか。それは、読みたい、というより手に入れたいという欲求だったはずだ。
 本蒐集(しゅうしゅう)の魅力を描くエッセーの第3弾である本書の内容については、あえて、読んでのお楽しみとしよう。本の外見だけに対する書評があってもいいと思う次第である。
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 双葉社・2940円

朝日新聞 2011.9.4掲載書評より